株式会社 河野製作所

CROWNJUN
English Chinese
平成11年1月29日(金) 日刊ゲンダイ
  町の小さな凄い会社
  微細な外科手術には欠かせない―
   世界最小(10マイクロb)の針糸をつくる
 

        計器類の針からスタートして赤ん坊の手指用まで
            針糸は息で簡単にふき飛ぶほど極小
           10マイクロメートルの針糸、左はマッチ棒の先

 

 最近では、事故で手の指を切り落としてしまっても、手術で指は元どおりにくっつく。
 手術は、経験を積んだ外科医が顕微鏡で切断面を見ながら、切れた血管や神経を1本1本縫い合わせていく。1本の血管はそれがどんなに細くとも6カ所を縫い合わせる。最低6カ所縫わないと血液が漏れ出てしまうのだそうだ。
 また、1本の神経の中には電話線の太いケーブルのように、何十本もの細い神経組織が走っているので、それらが混線しないよう見当をつけながら縫い合わせねばならないという。
 この外科医の指さばきにも驚かされるが、神経・血管をつなぐ針糸の微細・精密さもスゴい。
 現在、国内で手術用針糸製造を手がける企業は7〜8社あるが、その一社、河野製作所は微細な神経・血管をつなぐ手術(マイクロサージャリー)用針糸製造を得意とする。
 「昭和25年の創業のころは、時計や計器用の製造をしていました。東海道新幹線の各車両の温度計の針などを一手に手がけていました」(現社長で3代目の河野淳一氏)
 温度計用から手術用針の製造に方向転換したのは、創業者・河野水之介氏が胃潰瘍で手術を受け、九死に一生を得たからだ。
 「『恩返しに、これからは手術用の針を作ろう』と思い立ったと聞いています」
 昭和38年に0.4_、40年に0.2_、43年に0.15_と製造可能な針の細さは年々極まり、今では直径10マイクロメートル(ミクロン)=写真=の神経縫合用糸を作る。世界で最も細いこの針糸は、ウルトラマイクロと呼ばれ、赤ん坊の手指の神経縫合用だという。
 このタイプの「針糸」の場合、針と糸が一体化している。木綿針のように尾部の糸穴に糸を通しているのではない。それでは糸穴部がわずかに太くなり、針を抜く時に糸穴が神経組織を損傷してしまうからだ。
 そこで針の尾部から針先端に向け小さな竪穴を開け、そこに糸を差し込み、穴をしめつ
ける構造になっている。
 穴あけにレーザー光線を使うなど、多くのハイテク技術も駆使されているが、いちばん気を使うのは、息で針を吹き飛ばさないようにすることだそうだ。
「一度舞い上がった糸付きの針は、あまりに軽いため空中に舞い上がって、素直には落ちてきません。1本5,000円の高価な針糸捜しに大わらわとなってしまします」
  日進月歩の現代医学を支えるのは息も詰まるようなモノ作り技術なのである。

                                       (ノンフィクションライター・坂本伸之)

 

  (株)河野製作所

● 会社設立 昭和45年
● 千葉県市川市曽谷2-11-10
● 代表者 河野淳一氏
● 資本金 1,000万円
● 従業員 74人
● 年商 6億6,000万円
● 047-372-3281

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