医療用縫合針・縫合糸メーカーの株式会社 河野製作所 所在地:千葉県市川市曽谷 商品販売会社:クラウンジュン・コウノ CROWNJUN

お知らせ

日本経済新聞 2014年(平成26年)5月9日(金曜日)

 一点突破 千葉企業の実力

 直径0.03mmの顕微鏡手術向けの針

 微細化、内外で市場開拓

 

 

  河野製作所(市川市)

  1949年創業。64年に医療分野に進出した。「クラウンジュン」のブランド名で展開している。

 

 医療の現場でマイクロサージャリーと呼ばれる、顕微鏡を使った手術が増えている。細い血管や神経を縫合するには医師の巧みな手腕だけでなく、小さな手術器具が欠かせない。河野製作所(千葉県市川市)は、直径わずか0.03mmという針を武器に、新たな市場の開拓を目指している。

 閑静な住宅街にある同社の本社工場。白衣を着用し、エアシャワーを浴びて室内に入ると女性社員らが顕微鏡をのぞきながら作業をしていた。作業台には空気の流れで針が飛ばないように粘着シートが敷かれている。完成した針は目をこらしてもほとんど見えない。

 直径0.03mmの針は長さが0.8mmで、素材はステンレスを使う。歯付けから切断、熱処理、研磨、曲げ、糸付け、滅菌などの工程があり、多くは熟練作業員による手作業だ。他社の製品は直径0.08mmまでがほとんどで「0.03mmの針を作れるのは世界でも当社だけ」と河野淳一社長は話す。

 工程の中で最も難しいのが糸付けだ。一般の針はレーザーで穴を開けて糸を付けるが、0.03mmでは針が溶けてしまう。そこで精密なプレス機械で針の端をV字型に加工し、そこに直径0.01mmの糸を配置。ピンセットでV字型の部分をつまんで丸め、糸を固定する。「かしめ」と呼ばれる手法だ。

 手作業に頼る微細化にあえて力を入れるのは「小さな針がないため治療できない病気やケガもある。それを何とかしたかった」と河野社長は説明する。この針を使えば直径0.1mmの血管の縫合も可能という。こうした開発姿勢が評価され、2009年には経済産業省などが開催する「ものづくり日本大賞」の内閣総理大臣賞を受賞。翌年には天皇陛下が本社工場を訪問され、熱心に見て回られた。

 同社は直径や長さ、湾曲などの組み合わせで約1万種類の針を生産する。全国約1,000の総合病院に納入し、今期の売上高は14億円を見込む。0.05mm以下の針の市場規模は2,000万円程度と小さいが「大手と競合すれば価格競争になるだけ。自ら市場創造し、育てていけばいい」と河野社長は意に介さない。実際、量産品の0.5mmの針の単価は1本数百円だが、0.03mmの針は1万円と付加価値が高い。

 移植技術の進歩や再生医療などで小さな針の需要は今後も増えるとみられている。国内市場は小さくとも海外に目を向ければ市場拡大の余地は大きくなる。このため昨年から中国でまず0.08mmの針の販売を開始。北京大学の医師らを訪ね、小さな針の有用性を地道に説いて回っている。

 今後は他のアジア諸国へも輸出していく方針で、各国でニッチな市場の開拓を狙う。

 

医療費の増加で市場は拡大傾向

 手術に使う針の国内市場は年間約250億円。外資を含めて約10社が参入しており、医療費の増加に伴い市場は拡大傾向にある。河野製作所の売上高の8割は針が占めており、本社工場が極小針などの手作り製品、つくば工場がラインによる量産を担当する。

 今後も針が主力事業であることは変わらないが、関連分野で多角化していく方針。医師が小さな針を持つためのホルダーや歯科矯正装置なども商品化しており、将来は針とその他で売り上げ構成比を5対5にする計画だ。

 

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