河野製作所グループ

沿革・受賞歴

日本機械学会関東支部 技術賞 受賞

 日本機械学会関東支部は機械技術・機械工業の発展に個人・団体を対象に技術賞を授与している。06年度には「水性インクを用いたグラビア製版システムの開発」でシンク・ラボラトリーが、07年度には「極細針の位置決め冶具用加工システムの開発」で河野製作所がそれぞれ受賞。記念講演として両社社長に受賞技術をもとにしたビジネスモデルの構築、産学連携の展開について語ってもらった。

  記念講演  河野製作所社長  河野 淳一 氏
  超微細手術への道を開く新医用器具の展開について
  開発品の評価、分析に連携生きる

 微細な製品を製造する技術で医療分野に進出した河野製作所。顕微鏡を用いて直径1㍉㍍以下の血管や神経を縫合する超微細手術(マイクロサージャリー)分野では先駆的な存在であり、直径3μメートルと極細でこれまでにない同手術を可能にする最新鋭の針を開発した。自社の技術を広く世の中で医療に役立てていく使命感と喜びとは・・・河野淳一社長が話した。

 日本機械学会の技術賞を受賞させていただくきっかけになりました産官学連携プロジェクトの内容と展開を紹介します。

 当社は1949年の創業以来、微細な製品の開発、製造を行っています。とくにマイクロサージャリーの分野では、国内産としては初めての専用針メーカーとして実績を上げています。

 特徴は多品種少量生産、短納期のほか、素材からの一貫生産と品質管理の徹底・新製品の設計から生産設備に至るすべてについて社内で開発していることです。

 今回参加した産官学の連携は、経済通産省が進める提案公募型事業に応募し、受託したものです。脳外科などさまざまな医療の分野において、世界で初めての超微細手術を可能にする技術開発プロジェクトということです。

 帝京大学や電気通信大学などと共同で0.1㍉から0.5㍉㍍の組織を手術するための装置開発です。実用化されれば毛細血管などの手術が可能になります。

 このプロジェクトがスタートした背景を説明します。私が昔、お世話になっていた帝京大学の教授とお会いした際、数十μメートル以下の細胞操作と数㍉から5㍉㍍くらいの小血管が外科手術の対象になっているというお話を伺いました。中間である0.1㍉から0.5㍉㍍の領域については"無医村"の状態だというのです。

 個の領域を外科的に扱えるようにしたいとの相談を受け、顕微鏡を製造するメーカーとともに同教授の熱意に感動して始めたわけです。 

 開発による効果としては、0.1㍉㍍までの血管が縫合できれば、指などの切断部分の再接合が確実にできるようになります。

 これにより、けがをした人の社会復帰に大きな貢献ができます。

 また、悪性腫瘍除去により皮膚や組織を損傷した場合については、これまで大型の血管から組織を採取していました。今回の開発により小さな血管からも移植手術ができるようになることから小規模な手術で済み、医療コストの低減につながります。

 この研究開発の目標としては、超微細針と糸を試作開発することがまず挙げられます。現在、医療分野で使われている最小直径80ミクロンの針では微細血管の縫合は困難なことから、さらに微少な針と糸が必要なのです。

 針は直径30μメートル、糸は15μメートル。あわせて高倍率の顕微鏡にあう、小さな針と糸を扱うための持針器も完成させなければなりません。

 これまでにマイクロ加工技術を使い、すでに直径30μメートル、長さ0.8㍉の針を製作いたしました。血管壁を突き破る形状と強度が求められることから、素材には新ステンレスを採用しました。糸の素材には直径15μメートルの黒色ナイロンを開発しました。

 今後予想される市場規模としては、500μメートル以下の外科的手術が可能になると、すべての領域が対象に及ぶことから非常に大きいものになると思います。まったく新しい医療技術であるため、数年後にはこの分野で世界シェア100%を見込んでいます。

 当社のような小さな会社がこのような大きなプロジェクトに成功できた要因には、臨床手術によって技術を確認することができたことが挙げられます。

 また、地域の企業と工学系大学との連携により研究開発品の評価や分析をすぐにしていただけ、即座に技術や材料の選択判断に反映できたことも効果的でした。

   

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